手柄取り合戦

連邦大陪審やSEC(証券取引委員会)からも書類の提出を求められるなど、トヨタは最悪の状況に陥ってしまった。巷間「側近が良くないのでは?」と言われ始めているけれど、ここにきてトヨタ側の構図も見えてきました。結論から書くと、私も側近に問題を抱えていると強く思う。
もちろん御大にも責任ありますが‥‥。

リーマンショックに端を発する未曾有の在庫を抱えたトヨタは、満を持して御大を社長にした。ここで御大が決めたことは「とにかく出費を抑える」。その際、苦労をした経験を持っている人なら「徹底的に抑えちゃイケナイ場所」というのもキチンとわきまえ、指示を出す。されど御大は金銭的に困った経験を持たない。

一方、側近は100%御大の意向に沿おうとした。「節約こそ手柄!」である。戦国時代の「首取ったらホメられる」のようなもの。だから米国トヨタの稲葉社長は「リコールの処理を上手に行って1億ドル浮かせた」なんていう「手柄」をご注進した。現時点では「企業の違反行為の疑い」での調査ながら、予断を許さない。

NHTSAの職員との談合で浮かせた1億ドルなんてことになれば、立派な汚職である。当然の如く陪審員制の裁判なら有罪だ。誰だって「良くない!」という判断をすることだろう。こんな「節約しました!」とか
「キッチリとケリを付けました!」みたいな「手柄取り合戦」が大々的に行われたろうことは想像に難くない。

私が知る限りでも、中止になっ
たイベントや、スポンサードが驚くほどたくさんある。御大の趣味の分野を除き、切って切って切りまくったに違いない。御大にとって良くない情報も、プリウスの不具合の如く側近の頭の中を通ると無害化されてしまう。ここまで読んで「まるで映画ですね!」と思うことだろう。

トヨタ側にとって良
い材料もある。アメリカって振れ幅が大き過ぎれば必ず戻ってくる。ここまで戦線拡大すると「トヨタさえ折れれば決着させてもいいだろう」という流れになり
始める。というかトヨタが折れず戦おうとしているからアメリカ側は怒っているんですけど。空気読んで騒動の原点に戻り、折れたらいい。

こう書くとまたしても「またヌーミーか!」と思われるかもしれないが、信じてくれないことには慣れてます。だって早い時期から警告を始め、1年前には「本当に危ない」と書き続けてきたけれど、全く信じてもらえませんでしたから。アメリカの情報には自信ある。

明るい材料をもう一つ。今後のトヨタにとって大切なハイブリッド車についていえば、日本で早めにリコール対応したためイメージダウンにならずに済んだ。「対応の遅さや原因不明のトラブル、そしてリコール逃れ」がアメリカで問題になっているのであり、この3点を解決済みのプリウスはセーフです。

23日から公聴会が始まる。日本時間の24日と25日にアメリカで流れるTOPニュースは全てトヨタの公聴会ネタになることだろう。

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6 Responses to “手柄取り合戦”

  1. かず より:

    こんばんは。
    あと数時間で公聴会ですね。
    トップは信念を貫くのと同時に、あらゆる人の意見にも耳をかす人でなければ、そして仕える人は正確なデータや情報を敏速に伝えなければならないと、改めて感じます。
    ましてや海外の情報など、国内以上に扱う事が重要だと思います。

  2. アミーゴ5号 より:

    トヨタの対応もさることながら、日本政府の言動もどうかと思います。
    アメリカの尻馬に乗って、一緒に批判ばかりしてどうするのでしょう。日本の大企業が窮地に追いやられているのだから、せめて言葉だけでも選んで欲しい。
    トヨタが日本にどれだけ貢献してきたかを思うと、あまりに冷たすぎる。
    確かにトヨタは誤った。でもアメリカ過剰なほど政治的な戦術を使ってトヨタを攻めているのだから、日本も政治的な戦術を使ってフォローすべきではないでしょうか?

  3. fan より:

    豊田社長は本当に経費を削減する為に手段を選ばなかったのだろうか。
    日産のゴーン社長はリーマンショック以降経費節約の為に野球部を休部しましたが、トヨタは厳しい状況下でも野球部は存続し、ラグビー部も陸上部も存続しています。また、バンクーバー五輪ではトヨタ所属の安藤選手、小塚選手が活躍しています。
    豊田さんが血も涙もなく容赦なく節約したならば、スポーツ支援活動は真っ先に切り捨てられていたはずです。でも、存続している。
    以前にも書きましたが、豊田社長が就任後に障害者の方がより働きやすい環境を整えた「トヨタループス」が設立されました。もし、コストを重視するならば、もっと安い請負業者に委託したでしょう。しかし、豊田社長はそんなことはしなかった。
    リーマンショックによる減産でも、北米トヨタ単独工場でのレイオフは行っていません。それは、トヨタが労使の信頼関係を最重要と考えているからでしょう。
    トヨタは「労働者の生活の安定が産業・企業の発展に不可欠なものであると同時に、産業と企業の発展なくして、労働者の生活の安定はあり得ない」という姿勢です。
    しかし、UAWは違います。高い失業率でも自分たちだけ利益を守り、現役時代とそう変わらない年金と無料の医療を受けている。会社がどうなろうと自分たちの利益ばかり追求してきました。
    UAWによる高い労働コストを払う為に、GMフォードクライスラーは族議員を利用して収益性の高い大型ピックアップトラックの税金を安くさせて大量に売りさばいた。でも、それが甘えの構造を生み出し、GMを破綻させてしまった。
    GMフォードクライスラーが弱体化するなかで、UAWは日本メーカーの工場を狙ってきました。しかし、何度もUAW組織化は失敗し、元々UAWが組織化されていた工場を母体とした3工場(NUMMI、マツダフォード合弁、三菱)しか組織化できていません。
    トヨタとして唯一UAWによって組織化されているNUMMIを仮に存続させてトヨタ単独での運営に移行すれば、UAWがトヨタの他工場でも組織化を図りかねない。UAWに組織化されてしまえばラインの稼動時間すら会社が決定できず、UAWとの協議を経なけばならない。工場の製造コストは上がり、レガシーコストも増大してしまう。
    横暴な組合によりその結果どうなるか、GMやJALの破綻が証明しています。
    JALも高いレガシーコストに苦しみ、族議員達が自身の選挙の為に日本中に採算割れの空港を作り、赤字路線でJALを飛ばし続けた。
    JALもGMも破綻したことで税金が投入され国民がツケを払わされることになってしまった。
    UAWと族議員達が既得権を守る為に、「納税者」も「メーカー」も「株主」も多大な損害を被ってしまった。
    そしてまた、GMへの国費投入を正当化する為にトヨタを叩きイメージダウンさせGM車の販売を伸ばすという手段に出ている。
    もし、トヨタがUAWに屈すれば日産、ホンダの工場もUAWに侵食されてしまうかもしれない。
    UAWと族議員の脅迫に屈してしまって良いのだろうか。
    NUMMIを閉鎖するという豊田社長・経営陣の決断は、閉鎖しなければ健全な経営ができなくなってしまうという苦しい判断だったと思う。
    もしも、GM経営陣が20年前にタイムスリップしてUAWと手を切るチャンスを得たならば、彼らはUAWと破綻確実な労使契約を結ぶだろうか。

  4. 那須与一 より:

    国沢さん この記事で実は感動しました!というか心に響きました。
    申し訳なく改めて「文章で食べているプロだ」と痛感しました。(毎日タダで読んでスミマセン)
    というのは、
    >側近は100%御大の意向に沿おうとした。「節約こそ手柄!」である。戦国時代の「首取ったらホメられる」のようなもの。
    自分の先輩や上司が出世すれば自動的に出世するけど、奥田さんや張さんの派閥でなければ、出世の目も無く左遷や出向だろうから、主流派でない自分がアピールすればするほど叩かれる時代もあった。それで定年退職を迎えサラリーマンを終えた人もいるでしょう。今度は創業家の御曹司がトップになった。派閥を知らない創業家出身だからこそ、目立つアピールをすれば一気に気に入れられる。
    これ、トヨタのような大企業でもうちのような小企業でも同じです。サラリーマンである私もそうです。しかも創業家の社長は、帝王学しか学んでない為、自分が一番優秀であり、最も会社のことを思っている人間であると信じているので、赤の他人には任せられない...。
    だから国沢さんの文章は、表層のトヨタ云々より、企業のドラマ、いや切ないサラリーマンと大資本家に生まれた人間の葛藤を見ているようです。
    加えて、今、自動車メーカーの創業家が会社の代表って、豊田と鈴木さんぐらいですよね。
    そういう意味でも、世界でも貴重な会社だと思うのです。

  5. えいさん より:

    fanさん
    fanさんのコメントは、大変、フェアな見解を述べられていると思います。
    また、本質を率直に見極め、同感です。
    国沢さんの言う側近の問題はありましょうが、豊田社長の(故石田退三氏を含む)豊田イズムは、真直ぐで、健全と思います。
    反省を踏まえ、豊田精神が、これを機会に更なる認知と
    信頼を受ける日がきっと来るでしょう。

  6. fan より:

    えいさん
    私のコメントを読んで下さって、理解して下さって本当にありがとうございます。
    私もトヨタが反省を踏まえ、トヨタ車作りに関わる(皮巻きステアリングの皮を縫うパートのお母さんから、ボルト1本の生産まで)全ての人々の真摯な努力に支えられた高品質が公平に評価される日が来て欲しいと願っています。

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